ファッションの“風”とは?〔4〕
‘風’を絞って集めると
それでは前回 ファッションの“風”とは?〔3〕 の続きになります。
*「同じ‘風’のアイテム同士なら合わせやすいとして、ちがう‘風’のアイテム同士は合わせられないの?」
合わないわけではないのですが… その場合はコーディネートの『主役』をどちらかに決め、
他の‘風’のアイテムは『引き立てのフォロー役』に徹してもらうという方法がいいと思います。
‘風’のちがうアイテム同士があまり主張し合いすぎると、変なコーディネートになりやすいです。
*「じゃあ、ラベンハム(英)のキルティングジャケットと、abxの細身のスーツの組み合わせは? 合うの合わないの?」
え〜と、この場合はですね。ラベンハムの方を、無機質な黒やグレーのカラーを選んで英国カントリーっぽさを減らすか、
abxのスーツのほうをグレンチェックやフラノ地などのカントリーテイスト混じりの生地にする。といった‘歩み寄り’をさせることで、
合わせは格段にやりやすくなると思います。両方で歩み寄らせるという方法も有効かと。
でも私に言わせれば、どっちつかずのコーディネートではなく、
どれかの‘風’をハッキリと体現した着こなしをしたほうがオシャレに見えやすいように思いますね。
テーマがハッキリしているということで。
たとえば私は高校三年の頃、リーバイスのシンプルなジーンズを買って、
「これさえ買えば即オシャレになれるハズ!」と息まいたことがあったのですが、残念ながらそうはなりませんでした。
しもふりジーンズがしもなしジーンズに変わっただけだったのです。
*「すると、リーバイスのジーンズを履いたからといって即オシャレになるとは限らないというのは……」
それはリーバイスのジーンズがb.のアメカジのアイテムでありながらも、もう永遠の超定番アイテムと化しているので、
それ自体では強い‘風’にはなれないことから来ています。リーバイスのシンプルなジーンズでオシャレをするなら、
‘他のアイテムを引き立てるフォロー役’として活用すればいいのです。
オシャレの初心者さんはまず、身につける多くのアイテムの持つ‘風’を、
一つにまとめて強くするところからはじめられてはいかがかと。
*「ふぅ〜む… すると、ラベンハムのカントリーカラーのモスグリーンのキルトジャケに、
無地のセレクトショップ風のabxの、無難なダークグレーの標準ボディラインのスーツの組み合わせだと、
イギリスカントリーの‘風’と、日本のセレクトショップ風の‘風’がぶつかりすぎる、と?
わりとそうなんじゃないでしょうか。
まあ、実際にコーディーネートをするときには、アイテムはこの2つだけではなく、
ネクタイにワイシャツに革靴にメガネにコートにカバンなど、いろいろあるわけですから、
これらのアイテムをどちらかの‘風’のほうに集中させて揃えて身につけることで、
よりどちらかの‘風’に寄せた、安定した‘風’のコーディネートにすることができますよ。
*「これも読者は各自、自分のイメージの中で検証したほうがいいね。
メガネ屋の書くファッション論なんてアテにならいんだからホントに」
そして、このマッピングした図で“対極”に位置する‘風’同士は、組み合わせが特に難しいですね。
a.とc.の組み合わせ。
b.とd.の組み合わせ。
はそれぞれ、主役と補助役を役割り分けしてもなお、
違和感のある組み合わせになりやすいという上級者向けのコーディネートになる気がします。
なお、“メッセージ性”で、それぞれa.b.c.d.を表してみれば……
a.私は若さにこだわりを持っています!
b.私は欧米の落ち着いた、伝統的だったり、活動的だったりする文化に共感しています。
c.私は高級感ある着こなしの中に、成熟した大人の「遊び」を主張したい!
d.魂のソウルだぜ!!
となるでしょうか。
*「なんかd.の扱いが偏ってるような」
私は個人的に、d.のテイストは苦手でしてね。人が着る分にはいいのですが、自分で着るのは苦手なんですよね。
だから客観的な位置づけをするのも苦手なんです…
*「すると、個人個人でスキか苦手かというのと、向き不向きというのがあるわけ?」
ああ、それは明らかにありますね。
私はこの、a.b.c.d.の4つの中では、c.が向いていると自分で思っていますが、
本当に自分に向くテイストの‘風’を発見できれば、着こなしも大きく変わり、あなたの第一印象も大きく変わるかもしれませんよ。
あなた自身の姿と個性を、できるだけ客観的に知ったうえで、本当に好感を覚える‘風’の方向を選び出して欲しいのです。
それがそのときの、あなたの目指した方角だったということで、結果はどうあれあなたの生きた経験となって身についてゆくでしょう。
*「失敗に失敗を重ねた岡本さんだからこそ、できるだけ失敗しにくいファッション道を考えて書いているわけだよね」
まったくそうですよ。時にはむちゃくちゃにトンデモ突飛な服装をして大学に通っていた私ですが、
それらもいまではほろ苦く、うすら甘ずっぱい思い出です。
*「周囲はいい迷惑だったろうね…〔ボソ〕」
あと、洋服屋さんに置いてあるひとつひとつのスーツのテイストも、この4つの分類で考えればとても理解しやすくなったりしますね。
a.ツープライススーツやセレクトショップオリジナルスーツなど、標準的な若者のシンプルスーツ。
b.身幅広めだったり直線的タイトだったり、カントリーテイストのトラディショナルなスーツ。
c.イタリアンテイストの入った、ソフトタイトコンシャスでノーブルなスーツ。
d.ハードでワイルドな夜の世界テイストのスーツ。
*「ところでさ、a.b.c.d.の4つの分類だけど、この4つをマップに取るっていうやりかたには、どの程度の客観性があるのかな?」
それはつまり、今回のa.b.c.d.の代わりに、他の雰囲気や価値観を置いてみてマッピングをしてみることはできないのか、ということですか?
*「あくまで今回のa.b.c.d.を、その4つの価値観で選び出したことには、ちゃんとした必要性というか、理由があったのかってことを聞きたいんだけど」
ああそれはですね。合理的な理由とか、客観的な理由とかはありません。
*「え? それじゃ、a.はフレンチとイギリス風のベーシックでなくてもいいし、d.は魂のソウルでなくてもよかったってこと?
なんでもよかったの?」
そうです。どういう価値観を選び出していくつの価値観を選び出して、どんなマップを描こうとも、それは自由です。
私は今回、たまたま私の洋服の趣味から見た4つの、思いついた価値観を挙げて図を書いてマッピングしてみましたが、
もちろん他の価値観をいくつか選び出して、マッピングをしてみたってかまいません。
*「じゃあ今回の以外に、どんなマッピングのしかたがあるの? たとえば…」
たとえば、
a.フレンチカジュアル。紺と白のしましま模様が私の命!
b.中国風の、伝統衣装のイメージ。マオカラージャケット大好き!
c.無印良品のカジュアルスタイル。格安でもけっこうカッコイイ!
d.パタゴニアのアウトドアスタイル。他の服と合わせやすくてステキ!
e.黒ベースのパッキリクッキリなシックスーツ。ボディコンシャスでタイトなスーツを!
この5つを円周上に配置して、その人の好きな洋服屋さんのアイテムを並べてみてコーディネートを一つの方向にまとめる着こなしを考えてみる。
そういうやりかたでもかまわないわけです。
*「要するに、おのおの各自の好きなイメージを割り振って図に当てはめて、
その日のコーディネートの方向をひとつにまとめるようにすればいいってだけのはなし?」
すべてを好きなイメージで固めるのではなく、
「これは苦手なイメージなんだけど、ついうっかりこっちに行ってしまいがちだな〜」
と思えるようなイメージがあれば、それも‘風’の中に加えて、“そこの‘風’にはあまり行き過ぎない、近づきすぎないようにする”という考えでもOKです。
*「岡本さんは、‘d.ハードワイルド路線’が苦手だから、そちらの‘風’をまといすぎないように注意してるってことね。
そうかそうか、特別に好きなイメージとか、特別に苦手なイメージとかをピックアップして、自分流の着こなしイメージマップを作ればいいってことだよね」
そうですね。そうしていただけばうまくいくという保証はできませんが、まあ何というか、面白いんじゃないでしょうか。
ファッションをそういうふうに扱って、コーディネートを考えていくという営みは。
*「ところで、岡本さんはこのマッピングというのをしてみて、どういうコーディネートを生み出してきたのかな?」
それはまあ、そのうちに徐々に秘密のベールも剥がれて、明らかになってくるのではないでしょうか。
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